P086◆ドリコンGP外伝 ドリコンGP外伝 中井 啓という生き方から
AKIRA NAKAIという生き方へ



ドリコンGP外伝
RAUH-Welt BEGRIFF(ラウヴェルト)

中井 啓という生き方から
AKIRA NAKAIという存在へ

以下は、全世界のNAKAIフリークがUPした
YOUTUBE動画の、ほんの一端であります。
実際に、どんな感じで受け止められているのか?
そのあたりを実感していただければ……

☆ RWB New Zealand No1 MONDO TV

☆ Akira Nakai San | RWB | 964 Targa | Porsche People


☆ New RWB Porsche 930 Shinkiro - Building process - Russia - Lowdaily - Rauh Welt - 4 K.


 

以下の文章は、1997年に藤本がCARBOYに書いた原稿である。
いま、あらためて読み返してみると、中井くんという『存在感』に、非常に近づいていると自画自賛してしまいました。

公道を走らせれば、絶対に負けない!と中井くんは言う。高速じゃパワーの差でおいていかれるけど、一般道で勝負となったら、オレは速いですよと言う。
なにしろ、階段でもどこでも、クルマで降りてしまう中井くんである。
チーム名である『ROUGH』は、荒っぽいとか、粗野なという意味を込めている。上手いドライバーだと言われるよりも、熱いドライバーと言われたい。これが中井くんだ。
峠歴は長い。AE86一筋で、ハイパワーマシンに乗り換えることなく、自分なりのスタイルを保持しながら、いつの間にか「中井啓という生き方」があるんだと、相手に印象づけてしまうようになってきた。
もちろん、まだ若い。まだまだ足りないところがいっぱいある。だけど、ちょっと足りないくらいが、ちょうどいいのだ。全部が全部バランスとれていたり、全体的にまとまっていたりすると、人間ってのは、どうも魅力に乏しくなってくる。
そういう意味で、中井くんは、ほどよくアンバランスである。
礼儀正しい面と、助手席で土足のままドーンとダッシュに足を投げ出す面とが、
ほどよくミックスされているのが、
「中井啓という生き方」なのだ。
カッコイイ。そう言えば、中井くんは、メチャメチャ照れてしまうか、ブスッとしてしまうだろうが、年上から見ても、年下として接しても、なんだかいいのだ。
ただ威勢がいいだけじゃない、ワルぶってるだけでもない。自分なりの法則にしたがって、自分を作り上げてきた……のだろう。
あるとき別の用事で、中井くんと電話をした。「カッコ悪いってことのなかに、カッコイイということがあると思うんですよ。なんかヘンな言い方ですけど、誰が見てもカッコイイというのは、どうも好きじゃなくて、ま、そうなれないということもあるんですけど、そうじゃないカッコよさってのが、うん、オレは好きですね~」
その昔、ジャックスというバンドがあった。ちょっとマイナーだったが、曲のタイトルに「カッコイイってことは、なんてカッコ悪いんだろう」というのがあった。
ちょいとひねくれてはいるが、ボクたちの真理のひとつではある。
中井くんのAE86歴は長い。イメージとしては、ずっとAE86に乗り続けている……そう言ってもいいだろう。ボロボロのAE86で、強烈な印象が中井AE86だ。鬼キャンに始まって、タイラップ吊り使い捨てバンパー、リベット留め、艶消し塗装、戦車色、そして今回の肌色AE86と、実にユニークだが、その基本ラインは一貫している。
単純なパターン変更ではない、思い付きではあるものの、その『色』は中井カラーである。一見異様、ジックリ見ても決してカッコよくない。だけど、それがどうも気になってしまう。最初はヘンテコなクルマだなと思っていても、時間がたつにしたがって、
カッコよく見えてくる。
こうして、中井流のクルマ作りは、全国の走り屋の注目の的となる。
その中井くんが、もう一台のクルマを持っているということは、意外に知られていない。しかも、それがポルシェのスピードスター(レプリカなんだけど、そこがまた中井くんらしい)とくれば、「エッ? ほんとかよ??」である。
だけど、あの鬼キャンの発想ポイントが「ランチャストラトスが好きで、あのフェンダーとタイヤのラインを出したくて、思いっきりキャンバーをつけたんです。でも、そこでタイヤがフェンダーから出ると、ちょっと違う。だから、鬼キャンってのは走りのためでもなんでもなくて、カッコ追求だけ。あんなの乗りにくいだけですよ。だけど、乗りにくいのを乗りこなすってのが、けっこう好きなんですね、これが」である。外車好きなのだ。というか、外車も好きなのだ。
中井くんの趣味指向にあってさえいれば、国産だろうが、外車だろうが、なんだってOKなのだ。
その昔、軽四にツナギ姿で六本木に行ってナンパしてた中井くんである。ひとりっきりで、どこまでもどこまでもドライブし続ける中井くんである。ポルシェでチェーンレスのまま、草津までスキーに行ってしまう中井くんである。
独特の美意識は、一般常識からは奇想天外に見えてしまうのだが、中井くんの内部では、キチンとスジが通っているわけだ。
「このスピードスターのボディって、世界で一番タイヤがなかに入ってるボディなんです。それが気に入ってて、ええ値段ですか? 100万円です。レプリカですから。
でも、それってオレっぽいでしょ。
インターメカニカってドイツのメーカーが作ったヤツで、けっこう作りがいいんですよ。探して、やっとこれならってやつを中古で見つけたんです」
ホロ骨が高くてカッコわるいので、自分で切った。おかげで、ホロを上げてると、
メチャメチャ狭くなった。
だけど、それはそれでいいのだ。エンジンはガンガンチューンする。で、めいっぱい足代わりに乗りまわす。そんな『乗り方』が不思議に似合ってくる。
AE86の方はと言えば、ハッキリ言って汚い!! エンジンオイルはダダ漏れ状態だし、キャブのジェットカバーもついていない。タイミングベルトにオイルが付きそうで、
配線もテキト~。こんなエンジンルームってあり?という状態だ。
だけど、中井くんに言わせれば、これくらいでいいのだ……となる。これまで8年ほどAE86に乗っていて、エンジンを壊し、
クルマをぶつけ、本当に酷使しながらも、
だんだんとAE86&4AーGのコツみたいなものがわかってくるというのだ。
ここだけはちゃんとやっておかなくちゃ
ダメな部分、全然平気で放っておいてOKなところ、そういう区分分けがあるというのだ。だから、一見するとメチャメチャだらしない中井AE86だが、あの荒っぽい中井くんの走りを支えている。
峠で中井くんの走りを見たヤツは、口をそろえて言う。
「中井くんって、AE86に乗ってるからわかりにくいけど、メチャメチャ上手いよ~!」
だけど、中井くんは、自分のことを上手いとも思ってないし、そう言われても嬉しくない。やっぱり「熱い走りをする」ヤツだと言われたいのだ。そう言ってもらうことが一番嬉しいという。
チューニングの世界が、グングンと変わってきている。ちょいと昔なら、クルマをいじって、全開させてるヤツというと、やっぱり暴走族なのだ。一見するとコワモテで、
ちょっと近づきにくい雰囲気があって、遠巻きにしてるだけで、なかなか近づけない……そうだったはずだ。
それが、規制緩和だかヘチマだか知らないが、誰も彼もがチューン、チューン。スズメじゃないんだから、い~かげんにしてほしいぜと思う。別に、チューンが市民権を得てほしいとか、そんなことを考えてるわけじゃないのだ。
自分のやりたいようにやる。他人と同じじゃ納得できない。オレが一番速い。こんな気持ち他のヤツらにわかってたまるか。こうなのだ。
硬派なんだかどうだかしらないけれど、オトコでありたい(別に女の子だって同じなんだけど)と思い続けているわけだ。
昨今のチューニング兄ちゃんは、パワーと情報だけは持ってるけど、肝心の、ここ一発という部分のオトコ感が希薄なのだ。もちろん、そうじゃないヤツもいる。だけど、その数は、チューニング人口に比べてビックリするほど低いのが現実だ。
その数少ないオトコの匂いがするヤツのうちのひとりが、中井くんなんだろうと思う。ときには少年であり、やけにオトナであり、たまにはバカやってる。だけど、その根本のところで、オトコの匂いがプンプンしている……ちょっと誉めすぎか?
カッコだけのヤツならゴマンといる。能書きだらけのヤツも数え切れないほどいる。
だけど、本気でストリートを攻めれるヤツってのは、そうそういないのだ。
能書きをたれてるヒマがあるならアクセル踏め! これがチューン入門者にいいたいことのひとつだ。いろんなノウハウを持つのはいいことだ。情報だって必要だ。
だけど、それらの根底には「危ない領域に踏み込む!」という大原則があるのだ。
ここが、チューニングカーと、他の自動車のブームとが違っている大きなところなのだ。どれだけでかいスピーカーを積んでいようが、遊びにいくときに便利だろうが、
だからといってバンには乗らない。
不便でも、金がかかっても、スピードを追求している限りは、そんなこたあ二の次、
さよ~なら~なのだ。たぶん、これから先も、中井啓という人間は、ドンドンと変わっていくと思う。ヘンテコなことを考え出して、自分で悦に入って……そしてガンガンにアクセルを踏み込んでいくのだ。
たぶん、そうだと思う。そう思ってポルシェを眺めると、どうも中井色がかかっているような気がしてならない!?

●なかいあきら●プロフィール

本名=中井啓。職業=塗装工。特技=荒っぽい走り。賞罰=秘密。一世を風靡した鬼キャン元祖である中井だが、それ以外にも走り屋の流行発信基地でもある。艶消し塗装、リベット打ちときて、今回のAE86は肌色……もうここまできたら、矢でもコテッチャンでも持ってこ~い!

 

現在の中井くんは、その独特のポルシェビルダーとして、世界中を飛びまわって、1台1台のカスタムメイドマシンを作り続けている。中井式のポルシェメイキングは、日本のみならず、いや、日本では異端なのだが、世界水準から見ると、なんとも格好がいいと評価されている。
よく考えてみると、これまでの日本人の、うち、誰が、こういう受け入れられ方をしただろう? 自分でアレンジしたボディキットを、そのまま装着するのではなく、オーナーと直接対決しながら、ワンメイクのマシンを作り続けていく。
最初に中井くんと話すようになった頃、彼の指先が気になった。ナイーブな話口調とは、まったく相容れない無骨な指先は、何年もの間、板金塗装を続けてきた職人の手でもあり、自分の好きなクルマづくりをするドリフト人間の主張でもあった。

だから、一度、CARBOYの特集タイトルページで、中井くんの手をアップで撮影して、それをドッカーンッ!と使ったことがある……無茶をするもんであります。
しかしながら、そんな無茶を通してしまうほどの『道理』が存在したわけです。

 

 

car.boy.jp 中井くんのリンク