P003 CARBOY !応援歌

いつのまにか常識と伝説になってしまった
TUNING
その起爆点から現代までの時系列を辿ってみる……

この本は、CARBOYというクルマ雑誌が歩んできた
『チューニング』というクルマを改造するジャンルに関する歴史といまを繋ぐものです。
日本のクルマを語るジャンルのなかに『チューニング』というものは存在しませんでした。
CARBOYは、当初修理とメインテナンスの雑誌として創刊しましたが、
その後、あれよあれよというまに、エンジンのパワーアップやレスポンス向上、
サスペンションやブレーキシステムの強化路線を歩み始めました。

そして、その記事が反響に反響をよんで、それまで存在しなかったジャンルへの興味と、
クルマを手に入れた若い層に支持されるようになり、社会的に大きなムーブメントへと
発展していくようになりました。年号でいえば1980年中盤から1990年にかけての
時代が急成長期と言っても過言ではないと思います。

当時は、『一時的なブームだよ』と、冷ややかな視線を浴びせられていたものの、
この『チューニング・ブーム』は、その後も勢いをそがれるどころか、
ますます一般的なものへと変貌していきました。
2018年現在、ほぼ常識となっているクルマの性能向上に関わるほとんどのことが、
この時代に生み出され(国内での話ですが)、そのノウハウやテクノロジー
といったものが、連綿と受け継がれてきています。

今回の『CARBOYリターンズ』では、勃興してきた新勢力である
『チューニング』ジャンルが、どのように登場し、それが発展していったのか?
そのあたりを時系列を踏まえながら、書き起こしたものです。

もちろんのことではありますが、1980年代といえば、
いまから指折り数えて30数年前のことになります。
記事が掲載された頃と比べますと、環境も設備も、そして技術力も、
格段の差があることは、当然のことであります。

しかしながら、今回の編集作業を行なっているなかで、
基本的なことというのは、当時となにも変わっていないということを
いやというほど痛感させられました。

CARBOYという雑誌には、ほぼ30年間の歴史があります。
、編集ページが130ページくらいとして、月刊誌ですから
かける12ヶ月かける30年……4万ページを超える記事量があります。

当然のことながら、それらをすべて網羅するということは、
不可能ですし、そういうことをやっても、面白くもなんともありません。

 

しかしながら、当時の『熱』といったものを感じていただくためには、
どうしても現役時代の記事を見ていただきたい……と思ってしまうのです。
もちろん、読者であったかたのなかには、「全巻ストックしてます!」
という豪の方もいらっしゃると思いますが、現実的には、倉庫やガレージの片隅、
あるいは押し入れの奥の方に、奥さんに邪魔にされながら、かろうじて存在している。
そういうケースがほとんどだと思います。

 

ですから、今回の編集作業にあたっては、30年間の歴史のなかでも、
勃興期の印象的なものを中心に、現代まで形態を変えながらも継続している
そういうものや人間、イベント、ノウハウ、技術といったものを中心に、
年代を串刺ししながら、本を編むこととさせていただきました。

CARBOYという雑誌が、『雑誌』という枠組みをすっかり忘れてしまって、
自分たちの価値観や面白さを追求するために生み出したものは、
5本や10本の指勘定では数え切れません。

完全にオリジナルイベントであった『ドリコンGP』は、
日本の枠をかんたんに突き破って、いまや世界的なモータースポーツ
イベントのひとつとして、様々な国々で開催されるようになりました。

 

根幹イベントともいえる『CARBOY0→400m』は、
雑誌社が主催するイベントとしては異例の20年間という長期間にわたって
開催され続けました。そして、『CARBOY0→400m』は、
たんなるレースイベントとして続いたのではなく、エンジンをパワーアップしたいという
非常に単純な要求と、完全にシンクロナイズしながら、国内のパーツメーカーが、
国産エンジンをベースにしたパワーアップパーツを、続々と開発していったのとも
あいまって、チューニング業界全体のバックボーンとなるものでした。

そして、イベントに限らず、CARBOYという雑誌は、
クルマに関わる生活やライフスタイルといったものにも、
大きな影響を与え続けてきました。

それまでは、ディーラーや整備工場に任せるしかないという常識を、
360度転回させた『プライベートチューン』という領域を定着させ、
そのなかでも、低価格を徹底的に追求したチューニング手法である
マルビTUNE(これは、名称はパクリですが)の推奨。
専用のパーツを購入するのではなく、他車種や純正部品の応用を究めていく
『流用チューン』など、それまで常識としては考えられなかった手法を、
当時の読者の方々と二人三脚状態で構築してきました。

それまでのクルマ雑誌という『枠』や『常識』、『考え方』といったものを、
びっくりするほどアッサリと捨て去って、独自の価値観だけに頼って、
新しいクルマ世界を構築しようとしてきた……それがCARBOYという雑誌が、
本当に目指していたものでした。ま、そんな偉そうなことを言いながらも、
「あ、コレすっごい面白いっ!」とか、「ス、ス、スゲーッ!」といった、
あきれるほど単純な動機に突き動かされてといったほうが正解かも(笑)

とまれ、それまで例を見なかったジャンルのクルマ雑誌ワールドを展開した
CARBOYですが、インターネットの普及、世代交代、リーマンショック、
とまあ理由は様々でありますが、要は世の中が不況ムード満点になったので、
広告出稿が大幅に減り、30万部以上売り続けていた勢いが陰り、
2011年に休刊となりました。

あれから7年になります。3年目の浮気くらい、おおめにみろよというには、
7年という歳月は長過ぎるようにも思いますが、この間、日本国内の状況は、
それ以前と比べても、もっともっと変貌いたしました。

電話機を例に取れば、ダイヤル式の黒電話からピッポッパのプッシュ式、
そして、無線の自動車電話の登場から、手に持てる携帯電話へと増殖、
そればかりか、インターネットに繋がることで、ホームページを見たり、
ブログを覗いたり、道案内に、インターネットショッピング、
LINEやFACEBOOK、TWITTERといった、
全く新しい通信手段が、いまではもう、あったりまえの時代となりました。

でも、です。でもでも、なんです。

雑誌というやつも、そうそう捨てたもんじゃないんです。
A4サイズの雑誌なら、見開きで展開される写真の迫力というものは、
「やっぱりコレ、コレですよ」と感じるヒトたちがいます。
いくらスマホで拡大できるとはいっても、大きさの感動というものは、
当然のことながら別物なんだと思わざるを得ません。

それに、文字を読むという楽しみは、スマホの情報を読むのとは、
ちょっとばかり異なったものがあります。紙に印刷されたものを読む。
ちょっと前ならそれしかなかったもんで、当たり前のことでしたが、
それがいまでは、スマホの小さい画面で、要点だけかいつまんで読む。

自分でも使ってますから、スマホの凄さは十分理解しているつもりです。
というか、そういうことに興味がたっぷりある方なので、
スマホは片時も離せない……んですが、小さいんです。読みにくいんです。

ま、そんな感想を持たれるひともいらっしゃると思いますが、
今回製作した『CARBOYリターンズ』では、
従来の雑誌同様に、大きな写真や、懐かしい記事を大きな誌面で
採用することにしています。しかしながら、そういうページの使い方を
すると……そうです。掲載する情報量の限界というのは、
自ずから決まっていますんで、その絶対量が不足してきます。

ここいらへんが、雑誌の編集者としては、
どうにもこうにもやりようのない
ジレンマでありますよ。ホント。

そこで、です。今回の『CARBOYリターンズ』では、
これまでのどんな雑誌も実行したことのない
『2018年式のコラボレーション』を計画してみました。

言われてみれば「な~んだ、そういうこと」ですが、
ある理由があって、これまでの雑誌という雑誌は、
この手法を採用しませんでした。

この『2018年式のコラボレーション』というのは、
これから読んでいただく記事に掲載されている
「QRコード」にスマホをかざしてもらう……というものです。

そうしましたら、その記事や原稿に関連した、
CARBOY30年間の掲載記事や関連記事、写真といった
データに直リンクしていただくことが可能となります。

編集部の理想としては、この本を手に取っていただいて、
「あったな~、懐かしいな~」だとか、
「へえ~、いまはこんなふうになってるんだ~」と、
コソコソと楽しんでいただく傍らに、スマホを置いていただきたいのです。

で、気になるところがあったら、スマホを手にして、
掲載されている「QRコード」を読み込んでいただきたいのです。

「QRコード」は、関連記事だけではなく、協力ショップさんや、
メーカーさんのホームページやブログに連結しているものもあります。
はたまた、昨年度から始まったCARBOYの公式ホームページにも、
リンクしていくように考えました。

「QRコード」の使い方や、公式ホームページのアドレスなど、
細かいことは別項で解説させていただきますが、ともかく、
この『CARBOYリターンズ』は、これまでの雑誌とは、
雑誌が違う……と受け止めていただければ幸いです。

でも、どうしてこんな単純なことを、他の雑誌はやらないのか?

そうです、そうですよね。誰だってそう思います。
こんなにインターネット時代なのに、どうして、雑誌とWEBの
連携プレーができないのか?

それには、業界の事情というものがあります。
雑誌というものは、写真や文章を作成して、それをデザインして、
印刷という過程を経て完成するものなんですが、

インターネット上で展開しようと思うと、写真や文章はともかく、
デザインというものを、別個で行なう必要があります。
つまり、制作費用が倍かかってしまうんですね。
近い将来『CARBOYリターンズ』を見たヒトが、
「こんなやり方があったのか~」と、もっと上手に展開してくれる
……ということもあるかもしれません(笑)

ま、ま、そんな話はさておいて、できれば、この出版不況の時代に、
『CARBOYリターンズ』を購入していただいた方に、
昔話から最新テクノロジー情報まで、楽しんでいただければ、
編集者冥利につきると、言うものであります!

そして、最後になりましたが、そんなこんなの状況&世相ですんで、
休刊した雑誌がリターンするからといって、広告出稿をしてくれるような
メーカーさんは、まんずないだろうと思っておりました。
しかしながら、昔からのCARBOY支援体制を維持してくれている
ショップ&メーカーさんが、出版支援金を出してくださることになりました。

この原稿を書いているページに掲載されているロゴタイプがそれであります。
感謝、感激、アメアラレッ!でございます。
伊達と酔狂で支援していただいた方々に、
この場を借りて、精一杯の御礼を申し上げますっ!

 

 

 

『CARBOY Returns!』製作応援 SHOP&MAKER 一覧!